「Un PASO ADELANTE」 フラメンコライブ@新宿エル・フラメンコ

201461295024.jpg発表会は二年に一度と決まっていますが、その間の年に有志によるライブを行っていまして、今年はその年。例年は高円寺のカサ・デ・エスペランサをお借りしておりました、ことしはいよいよ新宿エル・フラメンコでの公演となりました。エル・フラメンコは私と同い年の老舗のタブラオ。今までに数多くの偉大なスペイン人アーティストがその舞台の上で数多くの光を放ってきた場所です。その舞台にまだ未熟な私たちが立つ。それは大きな挑戦です。

「Un PASO ADELANTE」とは「一歩前へ」という意味。何かを始めようとするその最初の一歩は想像以上に勇気が必要である。そして想像以上のエネルギーのいることでもある。この一歩さえ踏み出せたら、その先には見えなかった世界が見えるかもしれない、知らなかったことに気が付くかもしれない。でもその一歩を踏み出すために力を込めて足を持ち上げ、その足で今まで歩いたことのない大地を踏みしめるのになんとエネルギーのいることか。その一歩を踏み出すことから逃げずにいられるか。勇気をもって新たな大地に自分の足跡を残すことが出来るか。この一歩で人生は大きく変わっていく。
もちろんいつも前へ一歩を踏み出す必要はない。立ち止まるときも、休憩するときも、時には前にではなく右に曲がることが必要なときがある。しかし、前に進むしか選択肢のない「今ここぞ」という瞬間が人生には時にやってくる。

大人になって一歩を踏み出すことが年々怖くなってきた。年を重ねることで経験を積み、前進には失敗や挫折もついてくることを知ったからだ。そして前進にはとんでもないエネルギーが必要だということも。

フラメンコと出会ってすでに四半世紀が過ぎた。いつも目の前にあるこの偉大なフラメンコ。いつか何か分かる日が来るんだろうかと考えていたら、ただ25年だけが過ぎた。フラメンコは私にとって畏敬の対象であり、「好き」などという言葉では語り尽くせない大切な大切なもの。そういうながらフラメンコを生業としてしまった私は、いつかフラメンコの神様から撥が当たるのではないかと怯えている。今や「フラメンコを踊る」ということは私にとって楽しいものでも楽しむのでもない。ヒターノのこの文化を尊敬し、どうしたらこのフラメンコを大切に大切に出来るのか、そのために出来ることなんて私にあるのだろうかと大真面目に考えてしまう。

しかしながら「今ここぞ」の時がまたやってきたようだ。今まで共に数年(十数年)歩んできた仲間たちと、エル・フラメンコの舞台で「フラメンコ」を踊る。私は更なる一歩を踏み出すための力を今どれほど蓄えているだろうか。しかしながら有志とは文字通り「志しの有る」人達。その多くの志が集まったら、何か新しい壁を乗り越えられるかもしれない。乗り越えたらそこにはまた知らなかったものがあるのだろうか。ないかもしれない。でも乗り越えてみなくてはそれすらも分からない。

偉大な踊り手であるマティルデ・コラルはこう言った。「フラメンコを踊るにはフラメンコへの愛だけがあればいい。フラメンコへ身をささげることです。」 
この言葉と共に、まずは足を持ち上げる練習から始めようか。その足を下ろして新たな大地を踏むために。

 

■ 「Un PASO ADELANTE」
  日時 2014年8月3日(日) 12:00開場 12:30開演 (10:30より整理券配布)
  場所 新宿エル・フラメンコ(新宿三丁目)
  チケット 2000円(全席自由・ワンドリンク付き)
  出演 (踊り)五十嵐志保子 大竹紀子 神永由美 伍賀久美子 斎藤麻里子 酒井優 白鳥智春 内藤佐和子 仲谷知世
          馬場彩子 半田美恵 平野千恵子 三浦久美   島村香
      (歌) 水落麻理 永井正由美  (ギター) 小林亮