Jerez-Fiesta y Cante Jondo(1991)

その昔「Flamenco Vivo」というCDのシリーズがあり、それはそれは多くの名盤を作り出してきました。その中の一つにJerez-Fiesta y Cante Jondo(1991)というCDがあります。

ヘレスのことをよく知らない人はまず最初からビックリするはず。なぜなら最初のブレリアだけで30分以上あるのです。これを初めて買った時、そのまま家のCDプレーヤーに放り込み、何かをしていた(何かは忘れた)。ふと気が付いた、なんだかこれずっとブレリアじゃない?そしてCDのリーフレットを見るとまさかの32分!すごいなぁ、ブレリアだけだよ、とんでもないCDだと思っていた。しかしとんでもないのはCDではなかった。

その昔、スペインでの屋外公演は自分でビデオを撮ることがなんとなく許されていた。ある日のヘレスでの屋外公演、初めて自分でビデオを撮ってみようとビデオカメラと三脚を持ち込んだ。緊張したものの、周りのおじさんおばさんたちもカメラを覗き込み「きれいに撮れるの?」「ほら、こっちの場所の方がいいぞ」なんて気にかけてくれたりもした。さて、当時はハードディスクはなく、ビデオテープ(miniDV)の時代。全てを録画するためにはいつテープを変えるかが大事になってくる。さて、あと一曲歌ったらどうも一本では足りそうもない、どうしようかなと思っていたところ「ではみなさん、ブレリアで終わりにしますね!」と歌い手の声。残量を見るとあと20分以上。よしこのままいける!と安心した。

しかしそこはヘレスでありました。
ブレリアは10分経っても15分経っても終わらない。いつもだったら大喜びして見ているパルメーロの一振りも「え?まだ踊るの?ビデオが足りない・・・」なんていうことを思ってしまう始末。結局そのブレリアは25分間続いた。録画していなかった時には全く気が付いていなかった時間のこの長さ。その時にあのCDを思い出した。「32分は特別じゃないんだ!」それからの録画はどんな時でも最後のブレリアの前にテープを変えることにした。

公演の最後のブレリアというのはそういうもんだと思って数年、さらに言えばブレリアは必ず公演の最後と思って過ごしてきた。ある日初めてセビージャのビエナルに行った時、ある歌い手が3曲目にブレリアを歌った。え?もう終わりなの?いくら何でも短すぎる!と憤慨していたら、4曲目にティエントを歌った。なんだか気持ち悪いが仕方ない。この人はこういう趣味の人なんだろうと思うことにした。

しばらくして小林亮氏にこのことを訴えたら返事はこうだった。

「ヘレス以外の所でももっと公演を見なさい。」

はーい。すみません。。。

Jerez-Fiesta y cante Jondo(1991)
Cante : Manuel Moneo, Juan Moneo “el Torta”, Antonio de la Malena, Mijita Hijo, Barullo.
Guitarra : Niño Jero y Moraíto